川端康成『眠れる美女』(1961年)

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タイトルからは女性の美しさを描いた小説をイメージするし、実際そういう描写も多いが、単にそれだけがテーマの作品ではない。

 

主人公は美女ではなく、江口という老人男性である。

 

この老人が眠れる美女の美しさを堪能しながら、今まで自分が関係した女たちを回想する、という内容になっている。

 

老人の性がテーマである作品はあるが、それだけではないようだ。

 

「男性にとって女性とはどんな存在か」ということが、老人の立場を通して描かれているのだと思う。

 

おじいさんの視点から書かれているので、女性が読んだらどう思うだろうか。

 

若い女性の美しさが生々しく絵が描かれており、それを魅力的に感じる女性もいるかもしれない。

 

しかし同時に、薬物で眠らせた若い美女を老人が愛でるということに、女性は嫌悪感を覚えるかもしれない。

 

ある程度年齢を重ね、男性についての理解が深まった女性には、江口老人の言っていることが分かるのではないか。

 

また男性にとっても、やはり特殊な状況が描かれているため、そこに直接的に自己投影するのは難しいだろう。

 

江口老人はおそらく社会的ステータスも高く、妻がいて、娘3人を育て上げた67歳の老人であり、お金に困っている様子もない。

 

しかしその年齢になり、近い将来にはもう「男」としての自分を楽しむチャンスがなくなってしまう、そんな自分をどう受け入れていいか分からないのである。

 

女性とはどんな存在なのかということを男性目線で淡々と描き続け、途中まではあまり大きな盛り上がりもなく話が進んで行く。

 

しかし最後にはサスペンス的な展開があり、それがこの小説を読み物としても面白くしていると思う。

 

今まですでに映画の原作(もしくは原案) として5回採用されてたり、オペラの原案にもなっているらしい。

 

この小説が芸術家たちをインスパイアすることがよくわかるだろう。

 

眠れる美女 (新潮文庫)